平成19年(厚)第138号
平成19年10月31日裁決

主文
社会保険庁長官が、平成○年○月○日付で、再審査請求人に対し、障害手当金を支給しないとした処分を取り消す。
再審査請求人のその余の請求を棄却する。

理由

第1 再審査請求の趣旨
再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、障害厚生年金又は障害手当金の支給を求めるということである。

第2 再審査請求の経過
1 請求人は、左角膜裂傷、網膜剥離(以下「当該傷病」という。)により障害の状態にあるとして、平成○年○月○日(受付)、社会保険庁長官に対し、障害厚生年金の裁定を請求した。
2 社会保険庁長官は、平成○年○月○日付で、請求人に対し、当該傷病による請求人の障害の状態は、厚生年金保険法施行令(以下「厚年令」という。)別表第2に定める程度(障害手当金支給の障害の程度)に該当するが、受給権発生日(症状が固定した平成○年○月○日)から裁定請求日(平成○年○月○日)までに5年を経過しているため、消滅時効により障害手当金を支給しない旨の処分(以下「原処分」という。)をした。
3 請求人は、原処分を不服とし、○○社会保険事務局社会保険審査官に対する審査請求を経て、要旨次のとおり述べて、当審査会に対し、再審査請求をした。「略」

第3 問題点
1 障害等級3級の障害厚生年金は障害の状態が厚年令別表第1に定める程度に該当する場合に支給され、障害手当金は同別表第2に定める程度に該当する場合に支給される。また、保険給付を受ける権利は、5年を経過したときは時効によって消滅することとされている。 2 本件の問題点は、請求人の障害の程度が厚年令別表第1に定める程度に該当するのか、同別表第2に定める程度に該当するのか、また、同別表第2に定める程度に該当するとして、障害手当金が時効により消滅していないと認められるかどうかということである。

第4 審査資料
「(略)」

第5 事実の認定及び判断
1 「略」
2 前記認定事実に基づいて、本件の問題点について検討し、判断する。
(1) 請求人の障害の状態については、事故直後の2回にわたる手術によっても左眼の視力回復が得られず、平成○年○月頃現症において、視力○で、改善の見込みはないとされ、現在も視力が○の状態である。このことからすると、請求人について、少なくとも初診日から起算して1年6月を経過した日である平成○年○月○日には障害の状態が固定していたと推認することができる。したがって、症状固定時における請求人の当該傷病による障害の状態は、厚年令別表第2「一眼の視力が0.1以下に減じたもの」(2号)に相当し、障害手当金が支給される障害の程度に該当する。
(2) 障害手当金を含む保険給付を受ける権利は、法の規定により、5年を経過したときは時効により消滅するとされているところ、本件裁定請求は、請求人に係る障害手当金の受給権が発生した平成○年○月○日より5年を経過した後である。しかしながら、これは、請求人が、平成○年○月から○月位までの間に、a所を訪れて窓口の担当者に対して障害給付の受給について尋ねた際に、同担当者が断定的に受給権を否定したために、請求人が諦めてしまって受給権を行使する機会を逸したまま年月が経過したためであると認められる。担当者は、請求人の障害の状態について注意をすれば、左眼の視力が○で回復がほとんど期待できない状態であって、少なくとも障害手当金が支給される可能性があると知り得たものというべく、これを検討することなく漫然と受給権を否定したことは、担当者としての注意義務に反する行為であったといわざるを得ない。保険者は、請求人が町役場の課、係、担当者の名前を具体的に申し立てており、その担当者が当時勤務していたことは判明しているにもかかわらず、請求人の述べるところを否定するような具体的事情を何ら明らかにしていない。そうすると、請求人の障害手当金の裁定請求が平成○年○月にまで遅延したことは、主として保険者の委任を受けてその職務を遂行していた自治体職員の責によるものというべきであって、同障害手当金の請求権に係る消滅時効は、その進行が中断していたとするのが相当である。
(3) そうすると、請求人に対し障害手当金を支給しないとする理由はないから、原処分は、この限りにおいて取り消されなければならない。

以上の理由によって、主文のとおり裁決する。