平成19年(国)第90号
平成19年10月31日裁決

主文
社会保険庁長官が、平成〇年〇月〇日付で、請求人に対し、障害基礎年金を支給しないとした処分は、これを取り消す。請求人には、平成〇年〇月〇日をその受給権発生日とする、障害等級2級の同年金が支給されるものとする。

理由

第1 再審査請求の趣旨
再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、主文と同旨の裁決を求めるということである。

第2 再審査請求の経過
1 請求人は、不安障害(以下「当該傷病」という。)により障害の状態にあるとして、平成〇年〇月〇日(受付)、社会保険庁長官に対し、障害基礎年金の裁定を請求した。
2 社会保険庁長官は、平成〇年〇月〇日付で、請求人に対し、当該傷病の初診日を平成〇年〇月〇日であると認定した上で、同人はその前日において障害基礎年金を受給するために必要な保険料の納付等についての要件を満たしていないとして、障害基礎年金を支給しない旨の処分(以下「原処分」という。)をした。
3 請求人は、原処分を不服とし、〇〇社会保険事務局社会保険審査官に対する審査請求を経て、当審査会に対し再審査請求をした。

第3 問題点
1 本件請求は、いわゆる障害認定日による請求であり、当該傷病の初診日が、請求人〇〇歳時点である平成〇年〇月〇日であることに関しては、当事者間に争いはない。
そうすると、障害基礎年金を受給するためには、当該傷病の初診日(平成17年8月12日)において国民年金の被保険者であり、かつ、その日から起算して1年6月を経過した日(その期間内にその傷病が治った場合においては、その傷病が治った日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含む。))(以下「障害認定日」という。)において、国民年金法施行令(以下「国年令」という。)別表に掲げる程度の障害の状態にあること(国民年金法(以下「法」という。)第30条第1項)の外、国民年金の保険料の納付等についての要件(以下、この要件を「保険料納付要件」という。)を満たしていることが必要になる。
すなわち、初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、@当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2以上であるか(以下、この要件を「3分の2要件」という。)、又は、A当該初診日の属する月の前々月までの1年間が保険料納付済期間又は保険料免除期間で満たされていること(以下、この要件を「1年要件」という。)が必要となる(法第30条第1項ただし書及び国民年金法等の一部を改正する法律(昭和60年法律第34号)附則第20条第1項)。
2 本件においてまず検討しなければならない問題点は、本件における具体的事実関係の下で請求人が保険料納付要件を満たしていたかどうか、であり、これが肯定的に解される場合、障害認定日における請求人の障害の状態が国年令別表に掲げる障害の状態に該当すると認めることができるかどうかである。

第4 審査資料
「(略)」

第5 事実の認定及び判断
1 (略)
2 前記認定された事実に基づき、本件の問題点を検討し、判断する。
(1) 一般論としては、厚生年金保険及び国民年金の被保険者資格に関する記録は、関係法律の規定に従い生じる資格の得喪を正しく反映したものでなければならず、第3号被保険者資格の得喪のように、その取得届出を怠りがちなものであっても、同様である。
(2) 本件の場合、請求人は、国民年金又は厚生年金保険の被保険者として、a 社退職に際しての第3号被保険者資格の取得届出以外の届出義務については、誠実に履行しており、前記1の(4)で事実認定したところによれば、前記届出義務の懈怠も強く非難することができない事情にあることが窺える。そして、第3号被保険者資格そのものは、保険料納付義務を生じさせるものでもなく、また、一定の要件が満たされれば当然に第3号被保険者とされるが、それに係る期間が保険料納付済期間に算入されるためには届出が必要とされているのに過ぎないものである。しかし、障害基礎年金の受給に関しては、軽微とも言える届出義務違反が本件のような重複記録期間の発生とその事後的な解消過程を通じて納付要件の欠缺を招き、障害基礎年金を受給できるような障害の状態にあるにもかかわらず、その受給が拒絶されるという重大な事態を生じせしめる危険性を秘めている。そうであるからして、保険者には、記録の統合・整備に努め、重複記録期間の発生を防ぎ、被保険者資格に関する記録が事後的訂正の必要がないようにしておくことが求められる、と言わざるを得ない。
(3) 前記1の(6) 及び(7) で事実認定したように、保険者は、基礎年金番号導入を機に被保険者記録の統合・整備に乗り出したが、このこと自体は評価できる。しかし、保険者は、請求人から、国年手番に由来する基礎年金番号の外に厚年手番もあるとの示唆を受け、同人は名寄せ対象者であり、基礎年金番号以外の手番は一つのみで、直ちに職権で記録の統合手続に着手すれば容易に統合が図られたにもかかわらず、それをしなかった。これは、老齢基礎年金等老齢給付の受給年齢までは相当期間があるとして、障害給付受給の際の納付要件欠缺の可能性に思いを至らせなかったことによるものと、思料される。そして、同人に係る記録統合手続を数年間にわたり中断させ、手続を再開した後も、基礎年金番号以外の手番を持っていることを承知していながら、通り一遍の照会のみで記録統合・整備の試みを放棄し、結果として、請求人が納付要件を満たすことを妨げたと言わざるを得ない状況を作り出している。
(4) 前記(3) で述べたように、請求人に係る資格記録の整備につき適切な対応を怠った保険者が、本件係争期間を保険料納付済期間から除外し、納付要件がないとして請求人の障害基礎年金の受給権を否定することは、行政法の分野においても適用があると解される信義則の観点から、はなはだ問題であると言える。もちろん、そうは言っても、それが保険事故発生後に保険料を払って給付を受けるというような、社会保険秩序に重大な支障を生じさせるような場合とか、被保険者にも重大な過失があるような場合は、信義則の適用を考えるべきではないが、本件は、これまで述べたところから明らかなように、そのような場合ではない。 (5) 以上のことから、前記1の(10) で事実認定したように、当該傷病により、障害等級2級に該当する障害の状態にある請求人には障害基礎年金が支給されるべきであり、これと相容れない原処分は妥当ではなく、取消しを免れ得ない。

以上の理由によって、主文のとおり裁決する。