平成18年(国)第253号
平成19年3月30日裁決

主文
社会保険庁長官が、平成〇年〇月〇日付で、再審査請求人に対し、障害等級2級の障害基礎年金を支給するとした処分は、これを取り消す。

理由

第1 再審査請求の趣旨
再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、主文と同旨の裁決を求めるということである。

第2 再審査請求の経過
1 請求人は、精神遅滞及びてんかん(以下、併せて「当該傷病」という。なお、傷病名としては「精神遅滞」しか記載されていないが、請求人が精神遅滞とてんかんにより障害の状態にあることは同資料上明らかであり、請求人の本件裁定請求及び原処分もそれを前提としているものと認められる。)により障害の状態にあるとして、平成〇年〇月〇日(受付)、社会保険庁長官に対し、障害認定日による請求として障害基礎年金の裁定を請求した。
2 社会保険庁長官は、平成〇年〇月〇日付で、請求人に対し、請求人の当該傷病による障害の状態は、国民年金法施行令(以下「国年令」という。)別表に定める2級の程度に該当するとして、障害等級2級の障害基礎年金を支給する旨の処分(以下「原処分」という。)をした。
3 請求人は、原処分を不服として、〇〇社会保険事務局社会保険審査官に対する審査請求を経て、当審査会に対し、再審査請求をした。その理由は、請求人の当該傷病による障害の状態は障害等級1級に該当するというものである。

第3 問題点
請求人の当該傷病の初診日が請求人の20歳未満の時期にあり、請求人がその障害認定日以後に20歳に達したことについては、当事者間に争いがないと認められるから、本件の問題点は、請求人の20歳に達した日である平成〇年〇月〇日における当該傷病による障害の状態が、国年令別表に定める1級の程度に該当すると認めることができるかどうかということである。

第4 審査資料
「(略)」

第5 事実の認定及び判断
1 (略)
2 上記認定の事実に基づき、本件の問題点を検討し、判断する。
(1) 請求人は、当該傷病により精神の障害の状態にあるものと認められるところ、精神の障害により1級の障害の程度に該当するものとしては、国年令別表に、「精神の障害であって、前各号と同程度(注:日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度)以上と認められる程度のもの」( 1級10号)が規定されている。そして、社会保険庁では、国民年金法上の障害の程度を認定するための基準として、「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」( 以下「認定基準」という。) を定めているが、給付の公平を期するための尺度として、当審査会もこの認定基準に依拠するのが相当であると考えるものである。
(2) 認定基準の第3の第1章第8節/精神の障害によると、当該傷病に係る精神遅滞による障害で1級に該当するものの例示として、「知的障害があり、日常生活への適応が困難で、常時介護を要するもの」が掲げられ、知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断するとされている。また、当該傷病に係るてんかんによる障害で1級に該当するものの例示として、「十分な治療にかかわらず、てんかん性発作を極めてひんぱんに繰り返すため、常時の介護が必要なもの」が掲げられ、てんかんの認定に当たっては、発作のみに着眼することなく、てんかんの諸症状、社会適応能力、労働能力、具体的な日常生活状況等の他の要因を含め、全体像から総合的に判断して認定するとされている。そして、いずれについても、日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能、特に、知情意面の障害も考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努め、現に仕事に従事している者については、その療養状況を考慮し、その仕事の種類、内容、従事している期間、就労状況及びそれらによる影響も参考とするとされている。
(3) 請求人の20歳に達した日である平成〇年〇月〇日当時における当該傷病による障害の状態をみると、精神遅滞の程度は重度で、IQは実施不能、推定〇〇以下とされているほか、日常生活能力の判定は、適切な食事摂取、身辺の清潔保持、他人との意志伝達及び対人関係の3項目こそ、「自発的にはできないが援助があればできる」であるものの、その余の、金銭管理と買物、通院と服薬、身辺の安全保持及び危機対応は、いずれも「できない」とされ、日常生活能力の程度も(4) とされている。そして、これらの状態に加え、てんかんによる障害も、大きな発作は月に〇、〇回であるものの、小さな発作は毎日〇、〇回は起こり、しかも、いずれの発作も、見守られていないと倒れてしまう心配があるとされている。以上のような障害の状態は、「知的障害があり、日常生活への適応が困難」で、「十分な治療にかかわらず、てんかん性発作を極めてひんぱんに繰り返す」ものというべきであり、それは、そのために「常時の介護が必要なもの」として、国年令別表の定める「精神の障害であって、前各号と同程度(注:日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度)以上と認められる程度のもの」に該当すると認めるのが相当である。
(4) そうすると、原処分は、妥当ではなく、取り消さなければならない。

以上の理由によって、主文のとおり裁決する。