平成18年(国)第259号
平成19年4月27日裁決

主文
社会保険庁長官が、平成〇年〇月〇日付で、再審査請求人に障害基礎年金を支給しないとした処分は、これを取り消す。

理由

第1 再審査請求の趣旨
再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、主文と同旨の裁決を求めるということである。

第2 再審査請求の経過
1 請求人は、慢性腎不全(以下「当該傷病」という。)により障害の状態にあるとして、平成〇年〇月〇日(受付)、社会保険庁長官に対し、障害認定日による請求として障害基礎年金の裁定を請求した。
2 社会保険庁長官は、平成〇年〇月〇日付で、請求人に対し、当該傷病の初診日を昭和〇年ころと認定した上、「障害基礎年金を受けるために必要な国民年金保険料納付済期間を満たしていない。」との理由で、障害基礎年金を支給しない旨の処分(以下「原処分」という。)をした。
3 請求人は、原処分を不服とし、〇〇社会保険事務局社会保険審査官に対する審査請求を経て、当審査会に対し再審査請求をした。その理由の要旨は次のとおりである。大学に在学中、大学の健康診断で指示された再検査等により、当時のa 病院に検査入院したところ、IgA 腎症といわれ、大学卒業後も経過観察のため通院したが、数年後には「寛解状態であるから通院不要である」旨いわれ、平成〇年〇月〇日にb 病院に受診して当該傷病と診断されるまで、腎疾患で診療を受けることはなかった。したがって、当該傷病の初診日は、平成〇年〇月〇日とすべきであり、大学に在学中の昭和〇年ごろではない。そして、請求人は、平成〇年〇月〇日から人工透析療法を受けている。

第3 問題点 1 20歳到達日以後に初診日のある傷病による障害について、障害基礎年金を受給するためには、初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、@ 当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2以上であるか、又は、A 当該初診日の属する月の前々月までの1年間が保険料納付済期間と保険料免除期間で満たされていることを必要とする( 国民年金法第30条第1項、及び、国民年金法等の一部を改正する法律( 昭和60年法律第34号) 附則第20条参照。以下、この要件を「保険料納付要件」という。)。
2 本件の場合、当該傷病の初診日を昭和〇年とした場合、その前日において、同人が保険料納付要件を満たしていなかったことは、明らかであるところ、請求人は、当該初診日は平成〇年〇月〇日であると主張し、その場合には保険料納付要件を満たしていることは当事者間に争いがないと認められるので、本件の当面の問題点は、請求人の当該傷病の初診日が昭和〇年〇月〇日であると認められるかどうかということであり、それが認められた場合には、障害認定日における当該傷病による障害の程度が、国民年金法施行令(以下「国年令」という。)別表に掲げる程度に該当するかどうかである。

第4 審査資料
「(略)」

第5 事実の認定及び判断
1 (略)
2 以上認定の事実に基づき、本件の問題
点を検討し、判断する。
(1) まず、初診日の点について検討する。請求人が大学在学中の昭和〇年ごろIgA 腎症との診断を受けたことは明らかであり、原処分はこれをもって当該傷病の初診日ととられたものと思料されるけれども、他方、数年後には寛解と診断され、その後は継続して腎疾患の治療や経過観察のための検査を受けていないこと、寛解と診断された時から平成〇年〇月〇日に受診して当該傷病と診断されるまでの正確な期間は明らかではないものの、平成〇年のc病院の受診・通院時点において、腎疾患は問題とされず、上記の平成〇年〇月の受診を機に腎不全が発見された状況からすると、それに先立つ少なくとも〇〇年を越える期間にわたって、請求人には腎障害の症状はなく、この間は、臨床的にみていわゆる寛解状態が持続していたと推認し得ること、そして、この間、請求人は健常者と同様の状態で普通に事業に従事していたこと等の事情が明らかであり、これらを総合勘案するならば、本件における当該傷病の初診日を考える上では、請求人がIgA 腎症と診断されてから平成〇年〇月に当該傷病と診断されるに至る間には、いわゆる社会的治癒があったものとみるのが相当と言うべきである。したがって、当該傷病の初診日は、昭和〇年ころではなく、平成〇年〇月〇日と認めるのが相当である。
(2) そこで、請求人の当該傷病による障害の状態について検討する。請求人の当該傷病による障害によって、障害等級2級の障害基礎年金が支給される障害の程度としては、国年令別表に「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」(15号)が掲げられている。そこで、社会保険庁では、国民年金法上の障害の程度を認定するためのより具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」(以下「認定基準」という。)を定めているが、給付の公平を期するための尺度として、当審査会もこの認定基準に依拠するのが相当であると考えるものである。認定基準の第3第1章第12節「腎疾患による障害」によれば、腎疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び病状の経過、人工透析療法の実施状況、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に該当するものと認定するとされている。また、人工透析療法施行中のものについては、原則として2級と認定するとされ、主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定するとされている。
(3) 前記1で認定した請求人の障害認定日(人工透析療法を初めて受けた日から起算して〇ヵ月を経過した日である平成〇年〇月〇日)ころの当該傷病による障害の状態は、人工透析療法を施行中であることから2級と認定され、上記のような諸事情のいかんによってはさらに上位等級に認定されることになるところ、この障害認定当時の障害の状態を明らかにする資料はなく、平成〇年〇月〇日を現症とする資料1によっても、一般状態区分表は「イ」であり、検査成績も、血清クレアチニン濃度が中等度以上の異常を示すものの、その他の検査項目には特段の異常が認められないこと等にかんがみると、さらなる上位等級に認定することはできないというべきである。したがって、障害認定日における請求人の当該傷病による障害の状態は、国年令別表に定める2級の程度に該当すると判断するのが相当である。そうすると、原処分は妥当ではなく、取り消さなければならない。

以上の理由によって、主文のとおり裁決する。