平成18年(国)第299号
平成19年5月31日裁決

主文
社会保険庁長官が、平成〇年〇月〇日付で、再審査請求人に対し、障害基礎年金を支給しないとした処分は、これを取り消す。

理由

第1 再審査請求の趣旨
再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、主文と同旨の裁決を求めるということである。

第2 再審査請求の経過
1 請求人は、慢性糸球体腎炎(以下「当該傷病」という。)により障害の状態にあるとして、平成〇年〇月〇日(受付)、社会保険庁長官に対し、事後重症による請求として障害基礎年金の裁定を請求した。
2 社会保険庁長官は、平成〇年〇月〇日付で、請求人の当該傷病の初診日(以下「本件初診日」という。)を昭和〇年〇月〇日と認定した上、「初診日において被保険者でないため」との理由で、請求人に対し、障害基礎年金を支給しない旨の処分(以下「原処分」という。)をした。
3 請求人は、原処分を不服とし、〇〇社会保険事務局社会保険審査官に対する審査請求を経て、平成〇年〇月〇日(受付)、当審査会に対し再審査請求をした。その理由の要旨は次のとおりである。請求人は、昭和〇年、高等学校在学中の健康診断の際、尿検査で異常が発見され、同年〇月〇〇市のa 病院を受診し、昭和〇年〇月まで同医院に通院した。その後、〇〇市のb 病院を受診したが、自覚症状がないので放置し、昭和〇年〇月〇日にc 病院を受診したところ、IgA腎症との診断を受けた。したがって本件初診日は昭和〇年ではなく、請求人が20歳に達する前である昭和〇年〇月とすべきである。そして、請求人は、平成〇年〇月〇日から人工透析療法を受けている。

第3 問題点
1 障害基礎年金は、障害の状態が国民年金法施行令(以下「国年令」という。)別表の定める程度(障害等級1級又は2級)に該当しないときは支給されないこととなっている。また、障害の原因となった傷病(その傷病が他の傷病に起因するときは、当該他の傷病)の初診日が20歳前にある場合のほかは、初診日において被保険者であること等とともに、初診日の前日において保険料の納付等に関する一定の要件を満たしていないときも、障害基礎年金は支給されないこととなっている。
2 本件の場合、本件初診日を原処分のように昭和〇年〇月〇日とした場合、同日において請求人が被保険者でなかったことは、明らかであるところ、請求人は、本件初診日は同人が20歳に達する前の昭和〇年〇月であると主張しているのであるから、本件の当面の問題点は、本件初診日が昭和〇年〇月ころであると認められるかどうかということであり、次いで、それが認められる場合には、裁定請求日における当該傷病による障害の程度が、国年令別表に定める程度に該当すると認められるかどうかである。

第4 審査資料
「(略)」

第5 事実の認定及び判断
1 (略)
2 以上認定の事実に基づき、本件の問題点を検討し、判断する。
(1) まず、初診日の点について検討する。前記1(1) 及び(2) の事実によれば、請求人について、昭和〇年ころの学校健診とその後の精密検査により尿蛋白及び沈渣中に赤血球が認められ、請求人は、そのころa 病院を受診したこと、同医院の医師は、専門の検査機関に尿検査と生化学検査を依頼し、報告を求めたこと、その際、生化学検査については検査項目として、尿素窒素とクレアチニンを指示していること、以上の事実が認められるのであり、これによれば、同医師が慢性糸球体腎炎を疑ったか否かは不明であるにせよ、腎機能の異常を疑ったことは明らかというべきである。そして、a 病院の指示で実施された当時の尿及び血液検査の成績と、昭和〇年のc 病院の初診時における検査結果に齟齬はない。このような事実関係にかんがみるならば、本件初診日は、請求人がa 病院を受診し、同医院の医師の依頼によって尿及び血液の検査が行われたことが明らかである昭和〇年〇月ころと認めるのが相当である。
(2) そこで、請求人の当該傷病による障害の状態について検討する。請求人の当該傷病による障害によって、障害等級2級の障害基礎年金が支給される障害の程度としては、国年令別表に「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」(15号)が掲げられている。
 そして、社会保険庁では、国民年金法上の障害の程度を認定するためのより具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」(以下「認定基準」という。)を定めているが、給付の公平を期するための尺度として、当審査会もこの認定基準に依拠するのが相当であると考えるものである。
 認定基準の第3第1章第12節「腎疾患による障害」によれば、腎疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び病状の経過、人工透析療法の実施状況、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に該当するものと認定するとされている。また、人工透析療法施行中のものについては、原則として2級と認定するとされ、主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定するとされている。
(3) 前記1で認定した請求人の裁定請求日当時の当該傷病による障害の状態は、人工透析療法を施行中であることから2級と認定され、上記のような諸事情のいかんによってはさらに上位等級に認定されることになるところ、平成〇年〇月〇日を現症とすれば、一般状態区分表は「イ」であり、検査成績も、血清クレアチニン濃度が高度の異常を示すものの、その他の検査項目には特段の異常が認められないこと等にかんがみると、さらなる上位等級に認定することはできないというべきである。したがって、裁定請求日における請求人の当該傷病による障害の状態は、国年令別表に定める2級の程度に該当すると判断するのが相当である。そうすると、原処分は妥当ではなく、取り消さなければならない。

以上の理由によって、主文のとおり裁決する。