平成18年(国)第415号
平成19年7月31日裁決

主文
社会保険庁長官が、平成〇年〇月〇日付で、再審査請求人に対し、障害認定日が到来していないとして、障害基礎年金の裁定を却下した処分は、これを取り消す。

理由

第1 再審査請求の趣旨
再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、主文と同旨の裁決を求めるということである。

第2 再審査請求の経過
1 請求人は、筋萎縮性側索硬化症(以下「当該傷病」という。)により障害の状態にあるとして、平成〇年〇月〇日(受付)、社会保険庁長官に対し、障害認定日による請求として障害基礎年金の裁定を請求した。
2 社会保険庁長官は、平成〇年〇月〇日付で、請求人に対し、「請求のあった傷病(筋萎縮性側索硬化症)について、初診日が平成〇年〇月〇日であり、初診日から1年6ヶ月の障害認定日が到来していないため」との理由で、障害基礎年金を支給しない旨の処分(以下「原処分」という。)をした。
3 請求人は、原処分を不服とし、〇〇社会保険事務局社会保険審査官(以下「審査官」という。)に対する審査請求を経て、当審査会に対し、再審査請求をした。その理由は、「審査官に対して行った審査請求の理由と同じ」というものであり、審査請求に係る審査請求書の「審査請求の趣旨および理由」欄の記載をそのまま掲記すると、次のとおりである。
特例認定日で申請したが、気管切開日(人工呼吸器装着)は特例に入らず、病状固定とは言えずとのことだが、筋萎縮性硬化症による呼吸不全の為の気切をするのは、進行性の呼吸筋萎縮でありこの日より病状が良くなる事は決してなく悪化する事は病気の常識で、この日より先人工呼吸器をハズす事は決して出来ず、勝手にハズし安楽死させる事は法律にもふれる。 この日(気切)を病状固定に当るのは常識と思われる。病気によっての特例日があるならこの病気によっても特例に当ると思う。
平成〇年〇月〇日を症状固定として認定してほしい。

第3 問題点
1 国民年金法(以下「法」という。)第30条第1項は、初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内にその傷病が治った場合においては、その治った日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含む。))を障害認定日とすると規定している。
2 本件は、当該傷病の初診日が平成〇年〇月〇日であることについては当事者間に争いがなく、請求人が、後記認定のように、平成〇年〇月〇日に人工呼吸器が装着され、同月〇日に気管切開術が施行されて、以来、人工呼吸器がはずされることはないのであるから、この平成〇年〇月〇日をもって障害認定日とすべきであると主張するのに対し、社会保険庁長官がこれを認めず、第2の2記載のような理由で原処分を行ったというものである。
3 したがって、本件の問題点は、請求人の上記主張を認めない原処分が、上記1の法の規定に照らして適法であり、かつ妥当といえるかどうか、換言すれば、請求人主張の日をもって当該傷病による障害についての障害認定日と認めることができるかどうか、あるいは、少なくとも本件裁定請求日において上記の障害認定日が到来していると認めることができるかどうかである。

第4 審査資料
「(略)」

第5 事実の認定及び判断
1 (略)
2 前記認定の事実に基づき、本件の問題点を検討し、判断する。法は、前記第3の1に引用したとおり、初診日から起算して1年6月の期間内にその症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った場合には、その日をもって障害認定日とすると定めているところ、請求人は、平成〇年〇月〇日、a病院b 科を受診して、初めて当該傷病と診断され、その後、c 病院に転医となり、平成〇年〇月ころから呼吸筋麻痺が進行したため、同病院において、同年〇月〇日に人工呼吸器が装着され、同月〇日には気管切開術が施行された上、人工呼吸器を常時装着された状態で現在に至っており、医学的にみて、今後、このような病状が改善されて、人工呼吸器の離脱が図られることは考えられないとされていることにかんがみるならば、請求人の当該傷病による障害については、人工呼吸器が装着され、気管切開術が施行された平成〇年〇月〇日には障害認定日が到来したと認めるのが相当である。そうすると、「障害認定日が到来していないため」との理由で本件裁定請求を却下した原処分は、法の解釈・適用を誤ったものであることが明らかであるから、取り消されなければならない。なお、本件のように、医学の初歩的な知識を明定されている法条に適用すれば結論は明白であるものが、再審査請求を経なければ適法・妥当な処理が図られないというのは極めて遺憾である旨を申し添える。

以上の理由によって、主文のとおり裁決する。