平成19年(厚)第302号
平成20年1月31日裁決

主文
社会保険庁長官が、平成○年○月○日付で再審査請求人に対し障害厚生年金を支給しないとした処分を取り消す。請求人には、平成○年○月○日を受給権発生日とする障害等級3級の同年金が支給されるものとする。

理由

第1 再審査請求の趣旨
再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、主文と同旨の裁決を求めるということである。

第2 再審査請求の経過
1 請求人は、右大腿骨頭壊死症(以下「当該傷病」という。)により障害の状態にあるとして、平成○年○月○日(受付)、社会保険庁長官に対し、いわゆる事後重症による請求として、障害厚生年金の裁定を請求した。
2 社会保険庁長官は、平成○年○月○日付で、請求人に対し、当該傷病の初診日を平成○年○月○日以降であると認定し、初診日において厚生年金保険の被保険者期間中であった者に該当しないとして、障害厚生年金を支給しない旨の処分(以下「前処分」という。)をした。
3 その後、社会保険庁長官は、平成○年○月○日付で前処分を取り消し、当該傷病の初診日を平成○年○月○日と認定したものの、請求人は同初診日においても厚生年金保険の被保険者期間中であった者に該当しないとして、同人に対し、障害厚生年金を支給しない旨の処分(以下「原処分」という。)をした。
4 請求人は、原処分を不服として○○社会保険事務局社会保険審査官に対する審査請求を経て当審査会に対し再審査請求をした。

第3 問題点
1 障害厚生年金を受けるためには、@対象となる障害の原因となった傷病(その障害の直接の原因となった傷病が他の傷病に起因する場合は当該他の傷病。以下同じ。)に係る初診日において厚生年金保険の被保険者であったこと、A当該障害の状態が、基準となる時点(本件の場合は裁定請求日)において、障害等級3級以上に該当していること、及びB保険料納付等に係る所定の要件(以下「保険料納付要件」という。)を満していることが必要とされている。
2 本件の問題点は、請求人の本件裁定請求が前記各要件を満たすものと認められるかどうかである。

第4 審査資料
「(略)」

第5 事実の認定及び判断
1 「略」
2 本件の問題点を検討し、判断する。
(1) 当該傷病に係る初診日の認定及び前記第3の1の@及びBの要件充足の判断大腿骨頭壊死症は、厚生労働省からいわゆる「難病」に指定されている疾患であり、当該疾患に関する厚生省(旧称)研究班の「診断と治療指針」によれば、症状として、「初発症状として股関節の疼痛を認めるが、ときには大腿部痛、膝関節痛、更には座骨神経痛様の疼痛を訴えることがある。」とされている。請求人は平成○年の○月まで「膝関節症」で受診しており、翌年の○月には同一医療機関でX線写真等を根拠に、当該傷病と診断をされている。さらに、当該傷病の発症について、平成○年と診断されているのであるから、膝関節痛は当該傷病の初発症状とみることは理由がある。そうして、膝関節痛が両側であり当該傷病が右であることについては、資料3において、「左側も大腿骨頭壊死症あり、現在経過をみている」とされているので、両側性の膝の痛みと当該傷病の存在の間に齟齬はない。以上のことから、本件においては、膝関節痛は大腿骨頭壊死症の前駆症状であると認定すべきであるから、当該傷病の初診日は、変形性膝関節症の初診日である平成○年○月○日とするのが相当である。この事実を、請求人の厚生年金保険に係る資格記録に照らせば、同人は当該初診日において厚生年金保険の被保険者であり、保険料納付要件のうち少なくともいわゆる直近1年要件(昭和60年法律第34号附則第20条第1項参照)を満していることが認められる。
(2) 請求人の裁定請求日当時における当該傷病による障害の程度の判断
ア 障害等級2級以上の障害厚生年金を受給するためには、障害の状態が、国民年金法施行令(以下「国年令」という。)別表に掲げる程度に、障害等級3級の障害厚生年金を受給するためには、厚生年金保険法施行令(以下「厚年令」という。)別表第1に掲げる程度に、それぞれ該当することが必要とされている。なお、2級以上の障害厚生年金が支給される者には、併せて障害基礎年金が支給されることとなっている。請求人の当該傷病による障害は、右下肢の障害が認められるところ、同障害により障害等級2級の障害厚生年金が支給される障害の程度としては、国年令別表に「一下肢の機能に著しい障害を有するもの」(12号)が、また、3級の障害厚生年金が支給される程度としては、厚年令別表第1に「一下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの」(6号)がそれぞれ掲げられている。そして、社会保険庁では、国民年金法及び厚生年金保険法上の障害の程度を認定するためのより具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」(以下「認定基準」という。)を定めているが、給付の公平を期するための尺度として、当審査会もこの認定基準に依拠するのが相当であると考えるものである。
イ 請求人の裁定請求日当時における障害の状態を、認定基準第3第1章第7節/肢体の障害「第2 下肢の障害」に照らしてみると、一下肢の3大関節のうち、1関節又は2関節に人工骨頭又は人工関節をそう入置換したもの又は両下肢の3大関節のうち、1関節にそれぞれ人工骨頭又は人工関節のそう入置換をしたものは、原則として3級と認定するが、そう入置換を行ってもなお「一下肢の用を全く廃したもの」程度以上に該当するときは、さらに上位等級に認定するものとされている。請求人は平成○年○月○日に右股関節に人工関節をそう入置換していることから、これは3級に認定されるが、人工関節のそう入置換を行った後の請求人の障害が「一下肢の用を全く廃したもの」の程度の状態にあるかどうかをみると、認定基準によれば、「一下肢の用を全く廃したもの」とは、3大関節中いずれか2関節以上が( ア)不良肢位で強直している、( イ) 関節の最大他動可動域が、健側の他動可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減以下である、( ウ) 筋力が著減又は消失している、のいずれかに該当するものをいう(ただし、膝関節のみが100度屈位の強直である場合のように単に1関節の用を全く廃するにすぎない場合であっても、その下肢を歩行時に使用することができない場合及び一側下肢長が他側下肢長の4分の1以上短縮している場合には、「一下肢の用を全く廃したもの」と認定する。)とされているところ、請求人の障害の状態はこれに該当するとは認められない。
(3) このようにみると、請求人には、本件裁定請求日を受給権発生日とする3級の障害厚生年金を支給するのが相当であるから、これと趣旨を異にする原処分は妥当ではなく、取り消さなければならない。
以上の理由によって、主文のとおり裁決する。