平成21年(厚)第386号
平成22年3月31日裁決

主文
後記第2の2記載の原処分は、これを取り消す。

理由

第1 再審査請求の趣旨
再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、障害等級3級の障害厚生年金又は障害等級2級以上の障害厚生年金及び障害基礎年金を、平成○年○月から支給することを求めるということである。

第2 再審査請求の経過
1 請求人は、右手関節開放骨折(粉砕)、右橈骨変形治癒骨折、右示指〜小指伸筋腱断裂(以下、併せて「当該傷病」という。)により障害の状態にあるとして、平成○年○月○日(受付)、社会保険庁長官に対し、国民年金法による障害基礎年金及び厚生年金保険法による障害厚生年金(以下、併せて「障害給付」という。)の、障害認定日による(予備的に事後重症による)請求をした。
2 社会保険庁長官は、平成○年○月○日付で、請求人に対し、提出された後記資料1−1の診断書では、請求人の障害認定日当時の障害の状態を認定することができないが、予備的請求である事後重症請求については、診断書によって、裁定請求日当時の、請求人の当該傷病による障害の状態は、厚生年金保険法施行令(以下「厚年令」という。)別表第1に定める程度に該当していることが認められるとして、平成○年○月から障害等級3級の障害厚生年金を支給する旨の処分(以下「原処分」という。)をした。
3 請求人は、原処分を不服として、○○社会保険事務局社会保険審査官に対する審査請求を経て、当審査会に対し再審査請求をした。

第3 問題点
1 いわゆる認定日請求による障害給付は、疾病にかかり、又は負傷し、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病につき初めて医師又は歯科医師(以下「医師等」という。)の診療を受けた日(初診日)において、厚生年金保険の被保険者であった者が、当該傷病初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内にその傷病が治った場合には、その傷病が治った日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含む。))(以下「障害認定日」という。)において、その傷病により国民年金法施行令(以下「国年令」という。)別表に定める程度の障害の状態にあるときに、支給される。そして、障害等級3級の障害厚生年金は、その傷病により厚年令別表第1に定める程度の障害の状態にあるときに支給される。
2 本件の場合、当該傷病の初診日が平成○年○月○日であり、同日において請求人は厚生年金保険の被保険者であること、平成○年○月○日及び同年○月○日において、請求人が当該傷病により厚年令別表第1に定める程度の障害の状態にあることについては、当事者間に争いがないが、障害認定日(平成○年○月○日)当時の現症に係る診断書が提出されていないので、保険者は、障害認定日における請求人の当該傷病による障害の状態を認定することができないとしているのに対し、請求人は当該傷病の治療の経過、その医学的特質等からそれは可能であり、その障害の程度は、少なくとも、厚年令別表第1に定める程度であったと申し立てているのであるから、本件の問題点は、本件における当該傷病に係る具体的事実関係、確立された医学的知見等から、請求人の上記申立てを採用することができるかどうかである。

第4 審査資料
「(略)」

第5 事実の認定及び判断
1 「略」
2 本件の問題点について検討し、判断する。
(1) 障害の程度の認定は、障害給付に関する権利の発生等に係るものであるから、実際に障害給付の支給請求者を診た医師等がその当時作成したカルテ等に基づく診断書によりそれを行うのが原則であるけれども、その傷病の医学的特性や治療経過等から、傷病による障害の程度が非可逆的に悪化する、または、時間の経過によっても、ある時点以降はその程度が変化しないことが確立した医学的知見等から認められる場合は、その当時を推定した診断書等によることも否定されないと解される。
(2) 前記(1) の観点に立って本件をみてみると、障害認定日である平成○年○月○日後の同年○月○日に、請求人の当該傷病による障害の程度のさらなる改善のため最後手術が行われ、それ以降リハビリテーションを受けたものの、障害認定日後の平成○年○月○日、同○年○月○日とその程度はほとんど変わらず、後者において厚年令別表第1に定める程度の障害の状態にあったことが認められ、その○月後の同年○月○日においてもそうであったのであるから、最後手術前の平成○年○月○日当時において、請求人の当該傷病による障害の状態は、少なくとも厚年令別表第1に定める程度以上であったと認められる。
しかし、本件の場合、それが国年令別表に定める程度以上であったと認めるために必要な資料は一切存在しない。
(3) 以上のところから、請求人には障害等級3級の障害認定日請求による障害厚生年金が支給されるべきであり、これと趣旨を異にする原処分は、取消しを免れ得ない。
以上の理由によって、主文のとおり裁決する。