平成21年(国)第24号
平成21年8月31日裁決

主文
社会保険庁長官が、平成〇年〇月〇日付で、再審査請求人に対し、障害基礎年金を支給しないとした処分は、これを取り消す。

理由

第1 再審査請求の趣旨
再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、主文と同旨の裁決を求めるということである。

第2 再審査請求の経過
1 請求人は、統合失調症(以下「当該傷病」という。)により障害の状態にあるとして、平成〇年〇月〇日(受付)、社会保険庁長官に対し、いわゆる事後重症による請求として、障害基礎年金の裁定を請求した。
2 社会保険庁長官は、平成〇年〇月〇日付で、請求人に対し、「あなたの場合、初診日(平成〇年〇月〇日)の前日において、保険料納付要件を満たしていないため。」として、障害基礎年金を支給しない旨の処分(以下「原処分」という。)をした。
3 請求人は、原処分を不服とし、〇〇社会保険事務局社会保険審査官に対する審査請求を経て、当審査会に対し、再審査請求をした。

第3 問題点
1 いわゆる事後重症による障害基礎年金の支給を受けるためには、支給事由となる障害の原因である傷病について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)の前日において、国民年金の保険料の納付等に係る次のいずれかの要件を満たしていなければならない(以下、この要件を「保険料納付要件」という。)、とされている(国民年金法(以下「法」という。)第30条第1項、第30条の2第1項及び同条第2項並びに国民年金法等の一部を改正する法律(昭和60年法律第34号)附則第20条第1項)。ただし、初診日において20歳未満であった者については、保険料納付要件は問題とならない(法第30条の4第2項)。
@ 初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2以上であること
A 初診日の属する月の前々月までの1年間のうちに保険料納付済期間及び保険料免除期間以外の被保険者期間がないこと
2 そして、いわゆる事後重症請求による障害基礎年金は、保険料納付要件を満たした上で、裁定請求日において、請求傷病による障害の状態が、国民年金法施行令別表(以下「国年令別表」という。)に掲げる程度(障害等級1級又は2級)に該当する場合に支給される。
3 本件の場合、当該傷病に係る初診日(以下「当該初診日」という。)が前記第2の2に記載したように保険者認定の平成〇年〇月〇日であるとすれば、年金記録に照らし請求人が保険料納付要件を満たしていないことは明らかであるところ、同人は、当該初診日は同人の20歳到達前の同〇年〇月〇日であると主張しているから、本件の当面の問題点は、同人が主張する同日を当該初診日と認めることができるかどうかということである。そして、これが認められた場合、裁定請求日における請求人の当該傷病による障害の状態(以下「本件障害の状態」という。)が国年令別表に掲げる程度に該当すると認めることができるかどうかということである。

第4 審査資料
「(略)」

第5 事実の認定及び判断
1 「略」
2 本件の問題点について検討し、判断する。
(1) A医師が請求人を初めて診断した平成〇年〇月〇日において、統合失調症の前駆症状ないし初期症状を既に発症しており、その後、症状が徐々に増悪し、最終的に統合失調症との診断結果となったとみるのが相当であるから、同日を当該初診日として認定することができる。
統合失調症は内因性の精神病で、発病が最も多いのは17歳から27歳頃までであるとされ、その経過は通常、前駆症状として、神経衰弱状態を呈し、強迫症状、抑うつ状態や本件の場合のように不眠症を示すこともあるが、その段階においては妄想知覚や妄想着想などといった統合失調症に特徴的な症状は出現せず、この時期に診断を受けた場合には、神経性障害、うつ病、本件の場合には、「神経性不眠症?」などと診断されやすい。このような状態で数回ないし数年(多くの場合は長くとも5、6年)間が経過するうちに、上記のような統合失調症に特徴的な症状が現れ、統合失調症の確定診断がなされる。保険者の代理人の確定診断をもって統合失調症の初診日とするとする見解は、その前駆症状段階で統合失調症との病識を得ることが困難であり、その病識がないまま確定診断を受けるまでに長い期間が経過するという統合失調症の特徴を無視して、その発症と確定診断の間が近接している多くの身体疾患同様に確定診断日をもって初診日とすれば、社会保険制度として相当でない結果になることを考慮しない、失当なものである。
(2) また、保険者は、本件障害の状態を国年令別表に定める障害等級2級以上に該当するものと認定していることが窺われるが、当審査会としても、本件障害の状態は国年令別表に定める障害等級2級以上に該当すると認める。
(3) 以上みてきたところからすると、請求人に対しては、裁定請求日の属する月の翌月から障害基礎年金を支給すべきことになり、これと趣旨を異にする原処分は取消しを免れない。
以上の理由によって、主文のとおり裁決する。