平成21年(国)第216号
平成22年1月29日裁決

主文
社会保険庁長官が、平成○年○月○日付で、再審査請求人に対し、障害基礎年金を支給しないとした処分は、これを取り消す。

理由

第1 再審査請求の趣旨
再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、主文と同旨の裁決を求めるということである。

第2 再審査請求の経過
1 請求人は、うつ病(以下「当該傷病」という。)により障害の状態にあるとして、平成○年○月○日(受付)、社会保険庁長官に対し、障害認定日による請求として障害基礎年金の裁定を請求した。
2 社会保険庁長官は、平成○年○月○日付で、請求人に対し、「初診日である平成○年○月○日の前日において、国民年金法第30条第1項に規定する納付要件を満たしていないため」との理由により、障害基礎年金を支給しない旨の処分(以下「原処分」という。)をした。
3 請求人は、原処分を不服とし、○○社会保険事務局社会保険審査官(以下「審査官」という。)に対する審査請求を経て、当審査会に対し、請求人の当該傷病に係る初診日(以下「本件初診日」という。)は、平成○年○月○日であり、その前日において障害基礎年金を受けるために必要な保険料納付等に関する要件を満たしているなどと主張して、再審査請求をした。

第3 問題点
1 20歳到達日以後に初診日のある傷病による障害について、障害基礎年金を受けるためには、@対象となる障害の状態が、国民年金法施行令(以下「国年令」という。)別表に掲げる程度(障害等級1級又は2級)に該当することと、A当該障害の原因となった傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、( ア) 当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2以上であるか、又は、( イ)当該初診日の属する月の前々月までの1年間が保険料納付済期間と保険料免除期間で満たされていること(以下、このAの要件を「保険料納付要件」という。)、を必要とするとされている ( 国民年金法第30条第1項、及び、国民年金法等の一部を改正する法律(昭和60年法律第34号)附則第20条第1項)。
2 本件の場合、保険者は、本件初診日を平成○年○月○日と認定したのに対し、請求人は、それは平成○年○月○日にあるとし、その前日において保険料納付要件を満たしており、これを前提とする障害基礎年金を求めていると解されるので、本件の問題点は、まずは、本件初診日はいつかであり、次いで、その初診日の前日において、前記の法律の規定に照らして、請求人が保険料納付要件を満たしていると認められるかどうかである。そうして、当該保険料納付要件が満たされている場合、請求人の当該傷病による障害の状態が、国年令別表に定める程度に該当すると認められるかどうかである。

第4 審査資料
「(略)」

第5 事実の認定及び判断
1 「略」
2 本件の問題点を検討し、判断する。
(1) 本件初診日について検討する。前記事実認定したところから、請求人の前担当医であったA医師は、平成○年○月○日初診の傷病をPTSD(心的外傷性ストレス障害)と捉え、その引継ぎを受けたB医師はそれが「完治」したとみていたことが確認でき、同○年○月○日の交通事故により新たに難治性のうつ病(C医師によれば、「うつ病」)が発症したとの同医師の判断は、それ相応の合理性を備えたものであると言える。もちろん、精神医学領域の診断は、他の医学領域に比較すると客観性・科学性に欠け、診察者の経験や主観に頼らざるを得ないという現状があることは事実であり(西村健外編著「臨床精神医学」、南山堂)、また、保険者代理人の両者が同一傷病であるとの見解を完全に否定することはできないが、そうであるからと言って、社会保険制度の趣旨・目的に照らして、あまりに「うつ病」の領域が広がっている現状及び本件における前記認定事実から、安易に両者を同一ないし一連のものとみることはできない。以上のことから、本件初診日は平成○年○月○日であると解するのが相当である。
(2) その余の点について判断する。第3の1に記した法律の規定に照らすと、本件初診日の前日(平成○年○月○日)において、本件初診日の属する月の前々月である平成○年○月までの国民年金の被保険者期間のうち、同○年○月から同○年○月までの○月は保険料免除期間、同年○月は保険料納付済期間である。そうすると、請求人が、当該傷病による障害について障害基礎年金を受けるために必要とされる保険料納付要件を満たしていることは明らかである。
そうして、本件障害認定日における請求人の当該傷病による障害の状態は、国年令別表に掲げる程度に該当すると認められるので、請求人には平成○年○月○日をその受給権発生日とする障害基礎年金が支給されるべきであり、これと趣旨を異にする原処分は妥当でなく、取り消されなければならない。
以上の理由によって、主文のとおり裁決する。