平成20年(国)第248号
平成20年9月30日裁決

主文
社会保険庁長官が、平成○年○月○日付で、再審査請求人に対し、障害基礎年金の額を改定した処分は、これを取り消す。

理由

第1 再審査請求の趣旨
再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、主文と同旨の裁決を求めるということである。

第2 再審査請求の経過
1 請求人は、精神発達遅滞(以下「当該傷病」という。)により障害の状態にあるとして、○級の障害基礎年金の支給を受けていた。
2 社会保険庁長官は、平成○年現況届に添付された診断書を診査した結果、当該傷病による障害の状態は国民年金法施行令(以下「国年令」という。)別表に掲げる○級の程度に該当せず、○級の程度に該当するとして、平成○年○月○日付で、請求人に対し、同年○月から障害基礎年金の額を改定する旨の処分(以下「原処分」という。)をした。
3 請求人は、原処分を不服とし、○○社会保険事務局社会保険審査官に対する審査請求を経て、当審査会に対し、再審査請求をした。

第3 問題点
1 社会保険庁長官は、障害基礎年金の受給権者について、その障害の程度を診査し、その程度が従前の障害等級以外の障害等級に該当すると認めるときは、障害基礎年金の額を改定することができることとなっている。
2 本件の問題点は、平成○年現況届当時の請求人の当該傷病による障害の状態(以下「本件障害の状態」という。)が、国年令別表に掲げる○級の程度に該当しないと認められるかどうかである。

第4 審査資料
「(略)」

第5 事実の認定及び判断
1 「略」
2 本件の問題点を検討し、判断する。
(1) 国年令別表は、障害等級1級の障害基礎年金が支給される障害の状態を定めているが、請求人の当該傷病による障害にかかわると認められるものとしては、「精神の障害であって、前各号と同程度(注:日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度)以上と認められる程度のもの」(10号)が掲げられている。そして、社会保険庁では、国民年金法上の障害の程度を認定するためのより具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」(以下「認定基準」という。)を定めているが、給付の公平を期するための尺度として、当審査会もこの認定基準に依拠するのが相当であると考えるものである。
認定基準の第3第1章第8節/精神の障害によると、精神の障害の程度は、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に該当するものと認定するとされている。そして、知的障害で1級に相当するものの例示としては、「知的障害があり、日常生活への適応が困難で、常時介護を要するもの」が掲げられ、知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断するとされ、日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能、特に、知情意面の障害も考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努めるとされている。
(2) 請求人の本件障害の状態は、重度の精神遅滞があり、発語は単語だけで文字は読めない、名前はかろうじて図形状の文字を書けるがそれ以外の文字は書けない、一桁の計算も出来ない、用便の始末が出来ない、とされており、日常生活能力の程度は(4) で、日常生活能力の判定は、適切な食事摂取は自発的にはできないが援助があればできる程度で、他の5個の評価項目はいずれもできないとされており、このような状態は、前記1級の例示に相当する程度にあると認められる。
そうすると、請求人の本件障害の状態は、国年令別表に掲げる1級の程度に該当すると認められるので、原処分は妥当でなく、取り消されなければならない。
以上記したように、本件は、原処分が保険者自らが定めた認定基準に反していることは明々白々であり、請求人の申立てを認めるものであるので、公開審理を省略して、その迅速な権利救済を図ることが相当である。
以上の理由によって、主文のとおり裁決する。