平成21年(国)第206号
平成22年1月29日裁決

主文
社会保険庁長官が、平成○年○月○日付で、再審査請求人に対し、障害基礎年金の額を改定するとした処分は、これを取り消す。

理由

第1 再審査請求の趣旨
再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、主文と同旨の裁決を求めるということである。

第2 再審査請求の経過
1 請求人は、統合失調症(以下「当該傷病」という。)により障害の状態にあるとして、障害等級1級の障害基礎年金の支給を受けていた。
2 社会保険庁長官は、国民年金法施行規則第36条の4第1項による障害の状態に関する診断書(以下「現状診断書」という。)を診査した結果、請求人の当該傷病による障害の状態は、国民年金法施行令(以下「国年令」という。)別表に掲げる2級の程度に該当するとして、平成○年○月○日付で、請求人に対し、同年○月から障害基礎年金の額を改定する旨の処分( 以下「原処分」という。)をした。
3 請求人は、原処分を不服とし、○○社会保険事務局社会保険審査官に対する審査請求を経て、当審査会に対し、再審査請求をした。

第3 問題点
1 社会保険庁長官は、障害基礎年金の受給権者について、その障害の程度を診査し、その程度が従前の障害等級以外の障害等級に該当すると認めるときは、障害基礎年金の額を改定することができることとなっている。
2 本件の問題点は、現状診断書当時における請求人の当該傷病による障害の状態(以下「本件障害の状態」という。)が、国年令別表に掲げる1級の程度に該当しないと認められるかどうかである。

第4 審査資料
「(略)」

第5 事実の認定及び判断
1 「略」
2 本件の問題点を検討し、判断する。
(1) 精神の障害により、障害等級1級の障害基礎年金が支給される障害の程度としては、国年令別表に「精神の障害であって、前各号と同程度(注:日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度)以上と認められる程度のもの」(10号)が掲げられている。そして、社会保険庁では、国民年金法上の障害の程度を認定するためのより具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」(以下「認定基準」という。)を定めているが、給付の公平を期するための尺度として、当審査会もこの認定基準に依拠するのが相当であると考えるものである。
(2) 認定基準の第3第1章第8節/精神の障害によると、精神の障害の程度は、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況により、総合的に認定するものとし、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に該当するものと認定するとされ、統合失調症による障害で障害等級1級に相当すると認められるものの一部例示として、「高度の残遺状態又は高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害、その他もう想・幻覚等の異常体験が著明なため、常時の介護が必要なもの」が掲げられている。
(3) 請求人の本件障害の状態を前記認定基準に照らしてみると、次のとおりである。
請求人の当該傷病における症状は、慢性固定化しており、現在(平成○年○月○日現症)の病状又は状態像は、前回(平成○年○月○日現症)の診断書の記載時との比較で変化なしとされている。統合失調症等残遺状態は○○、○○○、○○○を、人格変化は○○○、○○を認めるとされ、その他、対人関係も含め、○○○○は低く、統合失調症の残遺状態として陰性症状が支配的である。日常生活能力の判定では適切な食事摂取、通院と服薬( 要)、身辺の安全保持・危機対応は、自発的にはできないが援助があればできるとされているものの、身辺の清潔保持、金銭管理と買物、他人との意志伝達・対人関係はできないとされ、清潔感を欠き、保清面では大いに問題があり、現実検討能力に欠け、浪費傾向を有し、深く考えもせず高額のものを買ったり、不用意に契約したりすることがあるとされている。日常生活能力の程度は(4)とされているものの、(5) とされた平成○年○月○日当時と比べると、日常生活能力の判定では、「金銭管理と買物」を除いて同様の記載状態であり、A医師は、平成○年○月○日現症時における請求人の障害の状態について、日常生活能力の判定及び日常生活能力の程度について、記載されたところと変わらないとし、また、『「日常生活能力の程度」が(4) であれば1級相当と考えますがいかがでしょうか」』と申し立て、請求人平成○年○月○日現症と同じ1 級の状態にある旨判断していると解される。
保険者の代理人は、審理期日において、前回の診断書の記載時と比較すると、月1回の訪問看護の利用がなくなり、「基本的な日常生活は可能だが」となっていることをもって、日常生活能力の程度が改善したと認められると陳述したが、訪問看護の利用は必ずしも日常生活能力の程度(ニード)に対応したものとは言えず、また、「基本的な日常生活は可能だが」とされているものの、日常生活能力の判定では、かえって「金銭管理と買物」に悪化がみられる。また、日常生活能力の程度が(4) の場合は、2級と認定するのが相当である場合が多いことは事実であるとしても、1級に認定することを相当とする場合がないわけではない。
以上のことから、請求人は、当該傷病により、平成○年○月○日現症時には、前回診断書記載時とおおむね変化のない病状、日常生活状況にあると認められ、日常生活能力の程度が(4)になったことをもって、平成○年○月○日現症時における請求人の障害の状態について、障害の程度が直ちに2 級の例示に至ったとするのは妥当性がなく、今だ従前の等級に該当する障害の状態にあるとするのが相当であると言わざるを得ない。
(4) したがって、上記と趣旨を異とする原処分は妥当ではなく、取り消さなければならない。
以上の理由によって、主文のとおり裁決する。