平成21年(国)第228号
平成22年7月30日裁決

主文
社会保険庁長官が、平成○年○月○日付で、再審査請求人に対してした、障害基礎年金を支給しないとした処分は、これを取り消す。

理由

第1 再審査請求の趣旨
再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、主文と同旨の裁決を求めることである。

第2 再審査請求の経過
1 請求人は、糖尿病、糖尿病性足壊死(以下、併せて「当該傷病」という。)により障害の状態にあるとして、平成○年○月○日(受付)、社会保険庁長官に対し、いわゆる事後重症による請求として障害基礎年金の裁定を請求した。
2 社会保険庁長官は、平成○年○月○日付で、請求人に対して、添付された診断書を診査した結果、裁定請求日における請求人の当該傷病による障害の状態( 以下「本件障害の状態」という。)は、国民年金法施行令(以下「国年令」という。)別表に掲げる程度(1級又は2級)に該当しないとの理由により、障害基礎年金の支給をしない旨の処分(以下「原処分」という。)をした。
3 請求人は、原処分を不服とし、○○社会保険事務局社会保険審査官に対する審査請求を経て、当審査会に対し、再審査請求をした。

第3 問題点
1 障害基礎年金は、障害の状態が国年令別表に掲げる程度(障害等級1級又は2級)に該当しなければ、支給されないこととなっている。
2 本件の問題点は、本件障害の状態が、国年令別表に掲げる程度に該当しないと認めることができるかどうかである。

第4 審査資料
「(略)」

第5 事実の認定及び判断
1 「略」
2 本件の問題点を検討し、判断する。
(1) 審理期日における保険者の代理人の陳述によれば、保険者は、当該傷病の初診日が平成○年○月○日であるとの前提の下に原処分をしたことが認められるが、初診日は、a病院に「DMにてH ○ . ○ / ○〜入院中」とあり、平成○年○月○日のa病院と認めるのが相当である。しかし、当該傷病の初診日の認定が○月異なることになっても、請求人が障害基礎年金を受給するのに必要とされる、いわゆる保険料納付要件を満たしていることに変わりはない。
(2) そこで、本件障害の状態が、国年令別表に掲げる程度に該当しないと認めることができるかどうかについて、検討することとする。
(3) 国年令別表は、障害等級2級の障害基礎年金が支給される障害の状態を定めているが、請求人の当該傷病による障害として、糖尿病そのものによる障害とその合併症による下肢の障害による障害が併存していることが認められるところ、それに係るものとして「前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であつて、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」(15号)、及び「一下肢の機能に著しい障害を有するもの」(12号)、が掲げられている。
そして、社会保険庁では、国民年金法上の障害の程度を認定する基準として「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」(以下「認定基準」という。)を定めているが、給付の公平を期するための尺度として、当審査会もこの認定基準に依拠するのが相当であると考えるものである。
(4) 認定基準から、当該傷病による障害の程度を認定するために必要な部分を摘記すると、次のとおりである。
ア 第3第1章第15節/代謝疾患による障害
㋐ 代謝疾患による障害の程度は、合併症(注:糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性動脈閉塞症等)の有無及びその程度、代謝のコントロール状態、治療及び症状の経過、具体的な日常生活状況等を十分考慮し、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1 級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に該当するものと認定する。
㋑ 糖尿病については、次のものを認定する。
@ インスリンを使用してもなお血糖のコントロールの不良なものは、3級と認定する。
A 合併症の程度が、認定の対象となるもの
なお、血糖が治療、一般生活状態の規制等によりコントロールされている場合には、認定の対象とならない。
㋒ 血糖のコントロールの良否については、インスリン治療時におけるHbA1c 及び空腹時血糖値を参考とすることとし、HbA1c が8.0%以上及び空腹時血糖値が140r/㎗以上の場合にコントロールの不良とされる。
㋓ 糖尿病性神経障害は、激痛、著明な知覚の障害、重度の自律神経症状等があるものは、本章「第9節/神経系統の障害」の認定要領により認定する。
@ 単なる痺れ、感覚異常は、認定の対象とならない。
A 糖尿病性神経障害が長期間持続するものは、3級に該当するものと認定する。
㋔ 糖尿病による障害の程度は、一般状態区分表(これは一般状態区分表のアないしオと同じ内容のものである。)で示された状態で判断される。
イ 第3第1章第7節/肢体の障害の「第4肢体の機能の障害」
㋐ 肢体の機能の障害は、原則として、本節「第1 上肢の障害」、「第2 下肢の障害」及び「第3 体幹・脊柱の機能の障害」に示した認定要領に基づいて認定を行うが、脳卒中等の脳の器質障害、脊髄損傷等の脊髄の器質障害、多発性関節リウマチ、進行性筋ジストロフィー等の多発性障害の場合には、関節個々の機能による認定によらず、関節可動域、筋力、日常生活動作等の身体機能を総合的に認定する。
㋑ 肢体の機能の障害の程度は、運動可動域のみでなく、筋力、運動の巧緻性、速度、耐久性及び日常生活動作の状態から総合的に認定を行うが、2級以上に相当すると認められるものを一部例示すると、次のとおりである。
障害の程度障 害 の 状 態
1級
1. 一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの
2. 四肢の機能に相当程度の障害を残すもの
2級
1. 両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの
2. 両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの
3. 一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの
4. 四肢の機能に障害を残すもの

㋒ 身体機能の障害の程度と日常生活動作の障害との関係を参考として示すと、次のとおりである。
@ 「用を全く廃したもの」とは、日常生活動作のすべてが「一人で全くできない場合」又はこれに近い状態をいう。
A 「機能に相当程度の障害を残すもの」とは、日常生活動作の多くが「一人で全くできない場合」又は日常生活動作のほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」をいう。B 「機能障害を残すもの」とは、日常生活動作の一部が「一人で全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」をいう。
ウ 第3の第2章第2節/併合(加重)認定によると、認定の対象となる2つの障害が併存する場合には、個々の障害について、併合判定参考表における該当番号を求めた後、当該番号に基づき併合(加重)認定表による併合番号を求め、障害の程度を認定するとされている。(以下「併合認定の手法」という。)。
(5) 認定基準の第2「障害認定に当たっての基本的事項」の「1 障害の程度」によると、上記の「日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものであり、例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるものである、とされている。
(6) 請求人の当該障害の状態を前記認定基準に照らしてみると、次のとおりである。
請求人の当該傷病は、糖尿病については、2型糖尿病であり、インスリンを36単位/ 日、2回/ 日使用し、空腹血糖値は記載されていないものの、HbA1c は平成○年○月○日で、○.○と○台前半で安定コントロールされているのであるから、その障害の程度は、3級の例示に至っていないと認められる。
糖尿病性神経障害は、知覚神経の障害及び自律神経の障害が特徴的に認められるが、ときに運動神経の障害が生じるとされている。本件障害においは、これら神経障害により、両足の感覚障害とともに足の血流障害、壊死が生じ、それが長期間続いていることが認めることができるので、それは併合判定参考表の該当番号3級7号に該当する。さらに、請求人は、過去における糖尿病のコントロール不良のため、特に右下肢の切断が検討されるほどに、下肢の血流障害が進行し、平成○年○月から数回にわたり手術し、右足第○〜第○趾までを切断され、デブリドマン・植皮により壊死部を改善中であるものの、それは欠損障害として「一下肢の第1趾又は他の4趾を中足趾節関節以上で欠くもの」に該当し、併合判定参考表の該当番号10号に相当する。(7) そして、前記欠損障害のみならず、運動神経の障害のため、両下肢の運動機能に障害が生じているものと認められる。その状態は、歩行は不可能であり、立てない、車いすによる移動の状態であると認められ、これを否定するような、保険者の主張、立証もない。これらのことから、請求人の糖尿病の合併症による下肢の障害の状態の程度は「両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの」の状態と評価でき、併合判定参考表の該当番号2級4号に該当する。
以上から、糖尿病による神経障害は、前記下肢の機能障害に含まれていると解されるので、請求人の当該傷病による障害の状態の程度は、足趾欠損障害と下肢の機能障害から求められ、併合認定の手法により、該当番号10号と該当番号4号を併合すると4号となり、それは国年令別表2級に該当すると認められる。
(8) そうすると、本件傷病による障害の状態は、国年令別表に定める2級の程度に該当すると認めることが相当であり、これと趣旨を異にする原処分は、取り消されなければならない。
以上の理由によって、主文のとおり裁決する。